頭痛は非常によくある症状ですが、生活の質を落としてしまいます。内科でよく見る頭痛について解説します。
前半では簡単な説明を、後半に詳しい説明をのせています。
目次
最も多い頭痛は緊張性頭痛と片頭痛
頭痛にはさまざまな種類がありますが、最も多いのは以下の2つです。
- 緊張性頭痛・・・頭の両側が圧迫されたり、締め付けられる感じがします。
- 片頭痛・・・最初は軽い頭痛で始まり、徐々に強くなります。頭の片側だけ痛むことが多いですが、両側とも痛むこともあります。「ドクドク」「ズキンズキン」のように、脈打つ感じがします(拍動性頭痛:はくどうせいずつう、と言います)。吐き気や嘔吐が出たり、光や音に敏感になることもあります。歩いたり、階段を上ったりなどの日常動作をすると、頭痛が悪くなることもあります。
診察が必要!危険な頭痛
次のような場合は重大な病気の可能性があるため、医療機関を受診する必要があります。
危険な頭痛の特徴
- 突然出現した頭痛
- 短時間(数秒~数分)で急激に強くなる頭痛
- 運動した直後や軽い怪我をした直後に始まった頭痛
- 妊娠中や40歳以上の方で、新たに出現した頭痛
- 以下のような症状を伴う頭痛
- 発熱と首のこわばり
- けいれん
- 性格の変化や混乱
- 意識が悪い
- 脱力感
- しびれ
- 目が見えにくい
※偏頭痛でも脱力感、しびれ、目の見えにくさはでることがありますが、初めての場合は受診をお勧めします。
頭痛を防ぐ生活習慣
食べ物や特定の行動が頭痛の原因となることもあります。このような場合は、"頭痛ダイアリー "が役立ちます。
頭痛ダイアリーには、頭痛が起こる前に何を食べたか、何をしたかを記録します。記録を見返すことで、控えた方がいい食事や行動があるかを把握できることがあります。どんな薬を飲んだか、薬が効いたかどうかも記録しておくと、治療に役立ちます。
頭痛を起こす原因として、例えば次のようなものがあります。
- ストレス
- 食事を抜く、食事が少なすぎる
- カフェインを摂る量が少なすぎる、または多すぎる
- 睡眠時間が短すぎる、または長すぎる
- アルコールの摂取
- 特定の飲み物や食べ物(ワインやチョコレートなどは偏頭痛を悪化させることで有名です)
頭痛の治療法は安静と内服薬
頭痛をの治療では、
- 涼しくて暗い、静かな部屋で横になる(片頭痛にはこの方法が最も効果的です)
- 痛み止めを飲む
を最初に試してみます。
頭痛を和らげる薬では、アセトアミノフェン(カロナール、タイレノール)、イブプロフェン(ブルフェン、イブA錠EX)、ロキソプロフェン(ロキソニン)などが有効です。鎮痛剤を長期間使い続けると、頭痛がかえってひどくなったり、副作用が出ることがあります。
頻繁に頭痛が起こる場合、頭痛が改善しない場合は、診察を受けて適切な治療法をご相談ください。偏頭痛では上記の痛み止めが効かない場合、専用の内服薬を使用します。
後半は詳細な説明です。前半よりもかなり詳しい内容になります。
頭痛の詳しい説明
ほとんどの頭痛は以下のいずれかに該当します。
- 緊張型頭痛
- 片頭痛
- 群発性頭痛
この3つが "一次性頭痛"の大半を占めます。一次性頭痛は他の病気が原因ではない頭痛のことです。
頭痛の種類と特徴
緊張型頭痛
緊張型頭痛の症状には次のようなものがあります。
- 頭や首の両側に圧迫感や締め付け感がある
- 軽度から中程度の痛みで、ズキンズキンしない
- 痛みは活動で悪化しない
- 頭痛の強さが増減する。
- 頭、首、肩の筋肉に圧痛がある
緊張型頭痛の人は、ストレスや緊張を感じることが多いとされます。片頭痛とは異なり、吐き気や嘔吐、光や音への過敏性、前兆などの症状はでません。
片頭痛
詳しく知りたい方は、片頭痛の解説ページをご覧ください。
片頭痛は日常生活に支障が出る強い頭痛がでます。頭痛は光や音、動きによって悪化します。人によっては吐き気や嘔吐を伴うこともあります。片頭痛は数時間続くことが多く、長いと3日間続くこともあります。3日以上頭痛が続くときは片頭痛以外の原因を考えます。
片頭痛が起きたときは、静かな部屋で電気を消して休むと楽になります。
女性の方が男性よりも発症率が高く、思春期や出産期に新たに片頭痛を発症することがあります。
閉経前後に頭痛が頻度や強さが変わる場合もあります。
群発性頭痛
群発頭痛にかかるのは1%以下の人と比較的珍しい病気です。女性より男性に多く見られます。群発性頭痛は年齢に関係なく始まりますが、発症年齢のピークは25~50歳と言われています。遺伝性がある可能性が高いとされます。
群発頭痛では、数週間から数ヶ月の間に、繰り返しとても強い頭痛(えぐられるような頭痛)が起こります(群発期:ぐんぱつき)。群発期の後は頭痛のない期間(寛解期:かんかいき)が続きます。群発性頭痛は前触れなく急に始まり、数分でピークに達します。目の周りやこめかみから痛み始めることが多いですが、顔、首、耳、側頭部から痛みが始まることもあります。常に片側のみに痛みがでます。
頭痛の発作は通常は15分から3時間程続き、1日に8回程度でることがあります。群発性頭痛の発作中は興奮状態となり、安静を保つのが難しくなります(落ち着きなく前後に揺れたり歩き回ったりします)。この興奮状態は片頭痛ではあまり見られず、群発頭痛に特徴的です。
群発頭痛では、痛む方の目の充血や涙、鼻づまりや鼻水、発汗、肌が青白くなるといった症状を伴います(片頭痛は両方です)。また、痛む方の目が光に敏感になることもあります。
飲酒したり喫煙すると群発頭痛が悪化します。
その他の原因(長期間続く頭痛)
1. 薬剤の過剰使用
痛み止めの過剰な使用は頭痛の原因となることがあります。頭痛が頻繁に起こると薬を頻繁に飲むようになり、薬が切れるとリバウンドで頭痛が起こり、さらに薬を使うようになる、という悪循環に陥ります。
何種類もの痛み止めを使うと、薬の使いすぎによる頭痛を発症するリスクが高まります。薬剤の過剰使用による頭痛を避けるため、以下が勧められます。
- オピオイド(麻薬)を含む薬は完全に避ける
- トリプタン系薬剤(片頭痛の薬)やアスピリン、アセトアミノフェン、カフェインが配合された薬剤は、月に9日以上使用しない
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:ロキソニン、ボルタレンなど)を月に14日以上使用しない
2. 外傷後の頭痛
頭にケガをしてから1~2日以内に頭痛がでることがあります。頭全体に鈍い痛みがずっと残り、時折頭痛が強くなることもあります。その他の症状としては、めまい、ふらつき、集中力の低下、記憶力の低下、すぐに疲れる、イライラするなどがあります。
外傷後の頭痛は数ヶ月間続くこともありますが、外傷後1~2週間以内に頭痛が改善しない場合は医療機関の受診が必要です。
3. 副鼻腔炎
片頭痛とは異なり、頭痛は数日間続きます。また、吐き気や嘔吐、音や光に対する過敏性はありません。
副鼻腔炎に関連した頭痛の再発はまれで、繰り返す場合は片頭痛など別の原因を考える必要があります。
4. 頚椎症
頚椎症による頭痛は首や後頭部から始まり、前頭部やこめかみに広がります。一般的に頭痛は片側だけで、首を動かすと痛みが悪化します。場合によっては、首の動きが悪くなったり、首を触ると痛みが出たりすることもあります。50歳以降に発症することが多いですが、むち打ち症がある場合は、それよりも早く発症することもあります。
5. 脳腫瘍
脳腫瘍がある人の約50%に頭痛が起こります。しかし、頭痛は非常によくある症状であり、頭痛で精密検査を受けた人に脳腫瘍が見つかることはほとんどありません。脳腫瘍が原因の頭痛は長く続き、前かがみになると悪化したり、吐き気や嘔吐を伴います。これらの症状は、脳腫瘍と関係のない頭痛でも起こります。
頭痛の危険信号
頭痛の大部分は命に係わるものではありませんが、まれに脳に影響が出る重大な病気の症状であることがあります(感染症、炎症、出血など)。以下のような場合は、すぐに医師の診察を受けてください。
危険な頭痛のサイン!すぐ医師と相談を
- 発熱や首のこりを伴う激しい頭痛
- 痙攣、性格の変化、混乱、意識消失を伴う頭痛
- 激しい運動や軽い怪我の後にすぐ発症した頭痛
- 脱力感、しびれ、目が見えにくいなどの症状がある頭痛(特に初めての場合)
頭痛の診断
頭痛の症状や経過、検査を組み合わせて頭痛の原因を診断します。人によっては複数の原因があることもあります。
ほとんどの場合、X線検査、CTスキャン、MRIなどの検査は必要ありません。これらの検査は危険な兆候がある場合、診察で異常が見られる場合などに行います。
脳の画像診断が必要な状況としては、以下のようなものがあります。
- 治療にもかかわらず、頭痛が悪化している場合
- 頭痛のパターンが突然変わった
- 他の病気が原因であることを疑うサインがある場合
頭痛の治療
頭痛の治療は急性期治療と予防的治療の2つがあります。
※片頭痛の治療については別ページで解説します。
- 急性期治療
頭痛が起きたときにすぐに痛みを和らげるために服用する薬のことです。頭痛がひどいときに、必要に応じて服用します。 - 予防的治療
将来の頭痛を予防するために、定期的(多くは毎日)に使用する薬や治療法のことです。頭痛の有無にかかわらず、定期的に使用します。
緊張型頭痛の治療
- 急性期治療
頭痛が月に15回以下の場合は痛み止めで治療します。月に15日以上頭痛がある場合は予防治療を検討します。
- 鎮痛剤(痛み止め)
イブプロフェン、ナプロキセン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン、アスピリン、葛根湯などの漢方薬
痛み止めの使いすぎで頭痛が出ることもあるので、鎮痛剤は使いすぎに注意してください。痛み止めを飲むのは週に1~2回(月9日以内)が目安です。また、胃炎、胃潰瘍、腎臓病、出血性疾患のある人は、アスピリンやNSAIDsを含む製品の服用は避けてください。
- 予防的治療 - 頻繁に起こる、長期間続く、日常生活に大きな影響が出る緊張型頭痛で使います。
- 三環系抗うつ剤(さんかんけい)
アミトリプチリン(最もよく使われる)、ノルトリプチリンなどがあります。頭痛の予防で使う場合、うつ病の治療に使用するよりはるかに少ない量を服用します。三環系抗うつ剤を少ない量で内服した場合、痛みを減らすと考えられていますが、薬がどのように作用するか正確にはわかっていません。
三環系抗うつ剤を飲み始めると、疲れやすくなることがあります。また、眠気が出ることがあるため、夕方や眠る2時間前に飲むことがあります。朝に眠気やだるさが残る場合は、さらに早い時間(夕食時頃)に薬を服用することも可能です。三環系抗うつ剤は少ない量で開始し、徐々に増やしていきます。効果が実感できるのは数週間から数ヶ月後です。
- 行動療法
頭痛を悪くする状況を特定し、避けることも大切です。
群発頭痛の治療
群発頭痛は急性期治療薬と予防薬の両方を必要とする場合が多いです。
- 急性期治療
- 100%の酸素をフェイスマスクで20分間吸入する
- トリプタン系薬剤
片頭痛の治療によく使われる薬剤です。トリプタン製剤(特にスマトリプタンの注射)は、群発頭痛を20~30分以内に改善します。自分で注射ができない場合は、吸入式(鼻腔スプレー)のスマトリプタンもあります。
酸素もトリプタンも効かない場合は、リドカイン(液体を鼻の中に塗る)やエルゴタミン(錠剤を舌の下で溶かす)を使うことがあります。
- 急性期治療と予防的治療の”つなぎ”の治療
予防的治療が効き始めるまでの間、以下のような治療を行うことがあります。
- ステロイド(プレドニゾン)
錠剤で服用します。長期使用は、副作用のリスクがあるため推奨されません。 - 神経ブロック
プレドニゾンで頭痛が改善しない場合や、ステロイドが使えない患者さんでは、神経ブロックを行う場合があります。後頭部の神経の周りに麻酔薬を注射して、頭痛を抑えます。
- 予防的治療
できるだけ早くから始め、群発頭痛が出たときは毎日服用します。複数の薬を併用する場合もあります。予防薬は群発頭痛が治まった後はゆっくりと中止します(症状が再発した場合は予防薬を再開します)。
- カルシウム拮抗薬
ベラパミル(商品名:ワソラン®)が最も信頼性が高いとされます。錠剤の薬で副作用はほとんどありません。必要に応じて徐々に増量していきます。ロメリジン(商品名:テラナス®、ミグシス®)も群発頭痛の予防薬として期待されています。 - カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)アンタゴニスト(商品名:エムガルティ®、アジョビ®)
痛みの神経伝達をブロックする薬です。月に1回、群発周期が停まる1ヵ月後まで服用します。これらの薬は、副作用が少ないのも特徴です。※日本では片頭痛への使用のみ承認されています。
薬の使い過ぎによる頭痛
原因となっている薬を特定し、使い過ぎている薬を減量す必要があります。痛み止めの使い方について、医師とご相談ください。
薬以外の治療法
- 生活習慣の改善
生活習慣の改善が頭痛を改善することを証明したデータは少ないですが、多くの頭痛専門医は頭痛改善に役立つと推奨しています。生活習慣の改善法は、例えば以下のようなものがあります。
- タバコを止める
- お酒の量を減らす
- カフェインの摂取を控える、または避ける
- 規則正しい食事と睡眠を心がける
- 週に数回の運動をする
- はり(鍼)・お灸
有効性を証明したデータはありません。しかし、他の治療法を試したくない人や、他の治療法が体に合わない人は試してもよいとされます。 - 行動療法
頭痛は、ストレス、不安、抑うつなどの心理的要因によって引き起こされたり、悪化したりすることがあります。さらに、頭痛を抱えながら生活することで、人間関係、仕事や学校、日常生活に支障をきたすこともあります。
精神科やカウンセリングなどで行動療法を受けることで、頻繁に起こる頭痛や長期間続く頭痛よるストレスが改善する場合があります。 - ハーブやホメオパシーのレメディー
数多くの「ホメオパシー」のレメディーやハーブが、片頭痛などの頭痛を和らげたり予防したりする効果があると宣伝されています。しかし、これらの効果は明らかではなく、推奨されていません。
参考文献
Otolaryngol Clin North Am 2014; 47:175.
Headache 2018; 58:479.
Curr Pain Headache Rep 2014; 18:418.
Am Fam Physician 2014; 89:642.
Continuum (Minneap Minn) 2012; 18:823.
Continuum (Minneap Minn) 2018; 24:1137.
慢性頭痛の診療ガイドライン2013.
投稿者プロフィール
- あかし内科クリニック(大阪府柏原市)の副院長です。総合内科専門医、家庭医療専門医・指導医、救急科専門医、医学博士。診療所から大病院まで、色々な医療機関で研鑽してきました(現在も継続中)。「最初に何でも相談できる医者」を理想とし、日々診療しています。
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