「お腹が痛い…」「トイレが近い…」そんな経験、誰しもあるのではないでしょうか?
この記事では下痢の原因、自分でできる対処法や、病院に行くべきタイミングなどを詳しく解説していきます。
下痢は続いている期間で2種類に分けられる
下痢は、便にふくまれる水分が増え、ふだんよりも柔らかく液状の便になる状態を指します。医学的には、1日に3回以上 の排便があり、便の形状が水様性または泥状の場合に下痢と診断します。
下痢は続いている期間で、急性下痢 と 慢性下痢 の2種類に分けられます。
- 急性下痢: 通常は数日以内に治まります。ほとんどの場合は感染症が原因です。
- 慢性下痢: 4週間以上続く下痢で、感染症以外の原因を調べる必要があります。
目次
急性下痢
急性下痢の原因
ほとんどの急性下痢は、ウイルスや細菌などの感染症が原因で起こります。
感染性胃腸炎
- ウイルス: ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど
- 細菌: サルモネラ菌、カンピロバクター、病原性大腸菌など
- 寄生虫: ジアルジア、クリプトスポリジウムなど(日本ではまれ)
これらの病原体は、汚染された食品や水 を介して体内に入り、腸に炎症を引き起こして下痢の原因となります。
食中毒
食中毒も急性下痢の主な原因の一つです。傷んだ食品や調理不十分な食品に含まれる細菌やウイルスが原因となります。
その他の原因
- 薬の副作用: 特定の薬剤 (抗生物質など)
- ストレス: 精神的なストレスが腸の運動に影響を与えることがある
- 飲食物: 香辛料や脂の多い食事、アルコールの過剰摂取など
急性下痢の症状
急性下痢の主な症状は次の通りです。
- 水様便または軟便
- 腹痛
- 吐き気・嘔吐
- 発熱
- 脱水症状: 口の渇き、尿量の減少、めまいなど
急性下痢の対処法
ほとんどの場合、特別な治療は必要ありません。症状に合わせて以下の対処を行います。
- 水分補給: 水分と電解質を補給するために、経口補水液やスポーツドリンクを飲みましょう。
- 食事: 糖分や脂肪分が多すぎる食事は浸透圧の影響で下痢がひどくなります。消化の良いものを食べましょう (おかゆ、うどん、バナナなど)。
- 市販の下痢止め薬: 発熱・血便・強い腹痛がある場合は服用を避けてください。
ただし、以下のような場合は病院受診をおすすめします。
急性下痢の予防
急性下痢の大部分は感染症です。予防のために以下の点に注意しましょう。
- 手洗いの徹底: トイレの後や食事の前には必ず石鹸で手を洗いましょう。
- 食品の衛生管理: 食材は適切な温度で保管し、調理する際は十分に加熱しましょう。
- 生水を飲まない: 海外旅行などでは、ミネラルウォーターを飲むようにしましょう。
慢性下痢
慢性下痢の原因
4週間以上下痢が続く場合は慢性下痢の診断となり、原因は多岐にわたります。
一般的には自然に改善する可能性は低く、重大な病気が原因となることがあるため、一度は診察を受けるようおすすめします。
- 炎症性腸疾患 (IBD): 潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸に慢性的な炎症が起こる病気です。
- 過敏性腸症候群 (IBS): ストレスや不安、特定の食品などが引き金となり、腹痛や下痢、便秘を繰り返す病気です。
- 感染症: 寄生虫や一部の細菌(クロストリジオイデス・ディフィシルなど)
- 吸収不良症候群: 小腸で栄養素がうまく吸収されない状態です
- 腸管腫瘍: 大腸がんや直腸がんなど
- 薬の副作用: 特定の薬剤が長期的に下痢を引き起こすことがあります。
- 食物アレルギー: 特定の食品に対するアレルギー反応が慢性下痢を引き起こすことがあります。
慢性下痢の症状
慢性下痢の主な症状は次の通りです。
- 4週間以上続く下痢
- 腹痛
- 腹部膨満感
- 体重減少
- 貧血
- 血便
慢性下痢の治療と対処法
慢性下痢の治療は、その原因によって異なります。
炎症性腸疾患 (IBD) の場合
- 薬物療法: 通常は専門医療機関で治療します。抗炎症薬、免疫抑制薬、生物学的製剤などを使用します。
- 食事療法: 症状に合わせて、消化の良いものを中心に食べましょう。
- 外科手術: 重症の場合は、腸の一部を切除する手術が行われることがあります。
過敏性腸症候群 (IBS) の場合
- ストレス管理: リラックスできる時間を作ったり、カウンセリングを受けたりする
- 食事療法: 低FODMAP食(小腸で消化吸収されず、大腸での発酵性を有する糖質)など、腸に優しい食事を心がける
- 薬物療法: 整腸剤や下痢止め、抗コリン薬などが処方されることがあります。
その他の原因の場合
原因に応じて適切な治療が行われます。例えば、感染症であれば抗菌薬、吸収不良症候群であれば栄養療法などが行われます。
慢性下痢の検査
慢性下痢の原因を特定するために、様々な検査が行われます。
- 血液検査: 炎症反応や貧血の有無などを調べます。
- 便検査: 潜血反応や病原体の有無などを調べます。
- 内視鏡検査: 大腸や小腸の状態を直接観察します。
- 画像検査: CTやMRIなどで腸管の状態を詳しく調べます。
まとめ|下痢の種類と対処法
原因 | 主な症状 | 対処法 | 病院受診の目安 | |
---|---|---|---|---|
急性下痢 | 感染症 (ウイルス、細菌、寄生虫)、食中毒、薬の副作用、ストレス、飲食物 | 水様便、腹痛、吐き気、嘔吐、発熱 | 水分補給、食事療法、安静、市販薬 | 脱水症状、血便、高熱、2日以上続く下痢、強い腹痛 |
慢性下痢 | 過敏性腸症候群 (IBS)、炎症性腸疾患 (IBD)、感染症、吸収不良症候群、腸管腫瘍、薬の副作用、食物アレルギー | 長引く下痢 (4週間以上)、腹痛、腹部膨満感、体重減少、貧血 | 原因に応じた治療 (薬物療法、食事療法、外科手術など) | 基本的には必ず受診。血便、体重減少、発熱は特に要注意。 |
下痢の原因は多岐にわたり、時に内視鏡検査でも特定できないケースがあります。
当院では、患者さま一人ひとりの症状を丁寧に診察し、適切な原因推定に努めています。必要に応じて、内視鏡検査が可能な医療機関と連携し、確実な診断と効果的な治療をご提供できるようサポートいたします。
投稿者プロフィール
- あかし内科クリニック(大阪府柏原市)の副院長です。総合内科専門医、家庭医療専門医・指導医、救急科専門医、医学博士。診療所から大病院まで、色々な医療機関で研鑽してきました(現在も継続中)。「最初に何でも相談できる医者」を理想とし、日々診療しています。
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