生活習慣病

健康診断で指摘されることの多い、高血圧、高コレステロール、糖尿病などの生活習慣病。数年間は体調に影響しませんが、動脈硬化の原因となり、心筋梗塞(しんきんこうそく)や脳梗塞(のうこうそく)がおこる可能性が高くなります。心筋梗塞や脳梗塞は後遺症が残ったり、命にかかわることもあるため、生活習慣病を改善して予防することが重要です

生活習慣病の改善で特に大切なことは3つありますす。

生活習慣病の改善で大切なこと

1. 健康的な食事
2. 運動を続ける
3. 薬をやめない

しかし、症状がない中で、こういった治療を続けるのは難しいこともあります。患者さんの考え方やライフスタイルに合わせ、続けやすい治療を考える必要があります。

生活習慣病を改善する行動

  高血圧 コレステロール 糖尿病
薬を毎日飲む
食事の改善
・野菜や果物、無脂肪乳製品をとる
・飽和脂肪酸を減らす
塩分制限    
運動
体重を減らす
減酒  

 

高血圧

高血圧は国民病とも言われており、50歳以上では4人に1人、60歳以上では3人に1人が高血圧と言われています。高血圧は女性の方が若干頻度が多いとされます。

下のグラフは年齢が上がるにつれ、血圧がどのように変化していくかを示しています。(JAMA Cardiol. 2020;5(3):255-262.より

年齢を重ねるにつれて血管の弾力性が失われるため、血圧は徐々に上昇していきます。最初は女性の方が血圧は低めですが、男性よりも血圧が上昇するスピードは速く、60歳以降は男性を追い越します。男女ともに血圧が上昇のスピードが速くなる40歳以降では、1年に1回は健康診断での確認をお勧めします。

病院で測る場合は、上の血圧が140以上(収縮期血圧:しゅうしゅくきけつあつ)、下の血圧が90以上(拡張期血圧:かくちょうきけつあつ)で高血圧とされます。病院だと緊張して血圧が高くなることがあるため、自宅でも血圧を測って確認します。健康診断で高血圧と言われた場合は、3か月以内を目安に医師へご相談いただくようお勧めします。

 

高血圧の基準(140/90以上が高血圧)

  分類 上(収縮期血圧) 下(拡張期血圧)
正常 正常血圧 120未満 かつ 80未満
正常高値血圧 120~129 かつ 80未満
  高値血圧 130~139 かつ/または 80~89
高血圧 I度高血圧 140~159 かつ/または 90~99
II度高血圧 160~179 かつ/または 100~109
III度高血圧 180以上 かつ/または 110以上

※高血圧診療ガイド2020

血圧を下げる生活習慣

ご自身で血圧を下げるためには、生活習慣の改善が必要です。

  • 体重を落とす
  • 脂肪分が少なく
  • 野菜や果物を多く
  • 塩分を減らす
  • 1日30分以上の運動をする
  • アルコールを減らす

色々なサプリメントが販売されていますが、残念ながら血圧が下がると証明されたものはありません。生活習慣の改善に取り組んでいただき、3か月たっても血圧が下がらない時は飲み薬が必要になります。

減塩のコツ

高血圧がある場合、一日の塩分摂取量は6g未満が勧められています。一方、日本人の平均摂取量は1日当たり10gと多いため、無理なく減塩するには工夫が必要です。

・減塩商品を上手に使う

やさしお減塩しょうゆ減塩みそなどの減塩食品を使うと、味付けをあまり意識せずに減塩できます(使いすぎると減塩になりませんので、量にご注意ください)。また、ダシをしっかり利かせた味付けにすると、使う塩分量を減らすことができます。そのほか、酢・しょうが・わさび・カレー粉などを使い、塩分に頼らない味付けを心がけるのが大事です。
※やさしおはカリウムの含有量が多いため、慢性腎臓病のある方は使う量に注意が必要です。

・塩分が多いスープを取りすぎない
ラーメンには麺に4g、スープに3-4gの塩分が含まれています。塩分量が多い料理ですが、スープを残すだけでも、塩分摂取量が半分になります。

薬の種類と血圧を下げる効果

血圧を下げる薬は、どれを使っても効き目は基本的に同じです。飲む回数やタイミング、副作用などから使う薬を決めます。ただし、糖尿病、腎臓病、心臓病がある場合や、妊娠中の場合は、それぞれ特に推奨されている薬があります。

脂質異常症(高コレステロール血症)

コレステロールにはいくつか種類がありますが、中でも中性脂肪、HDL(善玉コレステロール)、LDL(悪玉コレステロール)の3つが重要です。特にLDLは動脈硬化の一番の原因と言われており、健康診断で高いと言われたら、3か月以内を目安に医師へご相談いただくようお勧めします。

治療が必要なコレステロールの値は、人によって異なります。診察でどれくらい心筋梗塞(しんきんこうそく)を起こしやすいか判断し、おおよその治療目標を設定します。

しっかりコレステロールを下げた方がよい場合

  • 以前に心筋梗塞などの心臓病にかかったことがある
  • 喫煙
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 両親・兄弟が若い時に心臓の病気になった(男性:55歳未満、女性:65歳未満)
  • 高年齢

通常、薬を飲み始める前に、運動・減量と食習慣の改善を行っていただきます。3か月後に、改めてコレステロールの値がどれくらいよくなったか、血液検査で確かめます。コレステロールが上がりやすい食事は、赤身の肉(牛肉・豚肉)、バター、揚げ物、チーズなどが代表とされます。

LDLを下げるにはスタチン、中性脂肪を下げるにはフィブラートという種類の薬を使います。特にスタチンは、心筋梗塞になる可能性をかなり下げるため、とても有用な薬です。副作用はまれですが、筋肉痛が出ることがあります。

糖尿病

糖尿病にかかると、脳梗塞(のうこうそく)や心筋梗塞(しんきんこうそく)になる可能性が2~3倍になると言われています。高血圧や高コレステロール血症と違い、糖尿病の可能性があると言われた場合は早めにかかりつけ医へのご相談をお勧めします。

糖尿病にかかっても、最初はまったく症状が出ません。しかし、かなり進行すると、以下のような症状が出ることがあります。

糖尿病に関係する症状

  • のどが渇きやすくなった
  • 尿の回数が増えた
  • 尿で夜中に何度もトイレにいく
  • 尿が泡立つ
  • 傷が治らない、化膿しやすい
  • 自然に体重が減った
  • 手足がしびれたり、ピリピリする
  • 足がつる
  • 体のだるさ、疲れやすい
  • 目がかすむ、視力が落ちた

また、糖尿病が何年も放置していると、ほかの病気(合併症)の原因になることもあります。

  • 視力の低下や失明など眼の異常(網膜症:もうまくしょう)
  • 腎臓の機能低下(腎症:じんしょう)
  • 手足の鈍い感じやぴりぴりとした痛み(神経傷害)
  • 血の巡りが悪くなる(壊疽:えそ)、感染症を起こすと手や足指の切断
  • 免疫力の低下
 

糖尿病の治療で最も大切なのは、血糖値、血圧、LDLコレステロールを下げることです。血糖値は日によって、時間によって数値がかなり変わるため、HbA1c(へもぐろびん えーわんしー)を代わりに測ります。HbA1cを測ることで、ここ1~2か月間の血糖値が全体的な様子が分かります。

血糖値、血圧、LDLコレステロールのおよその目標値

  • HbA1c: 7%未満
  • 血圧: 上 40未満、下 90未満
  • LDLコレステロール:100未満

 

糖尿病があると言われた場合、高血圧やコレステロールと同じく、運動・減量・食事の改善をまず試します。減量や食事の変更だけで、血糖値が正常になる方もいますので、生活習慣の改善はとても重要です。

糖尿病を良くするための生活習慣

  • 健康的な食事:果物、野菜、全粒粉や玄米、脂肪分の少ない食事は血糖値が上がりづらいとされます。
  • 運動:食事、庭作業、散歩など、1日30分以上体を使う。
  • 禁煙:タバコを吸うと心筋梗塞、脳梗塞、ガンになる可能性が高くなります。
  • 減量:肥満の場合のみ。
  • アルコールを減らす:飲酒で血糖値や血圧が上がります。

禁煙外来

服薬なしでは禁煙の成功率は低いと言われていますが、禁煙補助薬を飲むことで成功率が高くなると知られています。12週間にわたり禁煙補助薬(当院はチャンピックスを第一選択としています)を服用していただき、診療のため、5回来院していただきます。

すぐ禁煙.jpより

下記に該当する方は、健康保険対象となります。健康保険の種類や使うお薬で変わってきますが、費用は13,000~20,000円ほどになります。

  1. ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で5点以上、ニコチン依存症と診断された方
  2. 35歳以上の場合、1日の喫煙本数×喫煙年数が200以上の方
  3. すぐに禁煙する意思がある方
  4. 「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、治療を受けることを文書により同意された方

ニコチン依存症に関わるスクリーニングテスト(TDS

設問内容はい
1点
いいえ
0点
問1.自分が思っていたより多くタバコを吸ってしまうことがある
問2.禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがある
問3.禁煙や本数を減らそうとし、喫煙したくてたまらなくなった
問4.禁煙したり本数を減らそうとしたときに、次のどれかがあった
 ・イライラ
 ・落ちつかない
 ・集力の低下
 ・ゆううつ
 ・頭痛
 ・眠気
 ・胃のむかつき
 ・脈が遅い
 ・手のふるえ
 ・食欲や体重増加
問5.問4の症状を消すため、またタバコを吸い始めたことがある
問6.重い病気にかかっていた際でも、タバコを吸ったことがある
問7.健康問題が起きていると分かっていても、タバコを吸ったことがある
問8.精神的な問題が出るとわかっていても、タバコを吸ったことがある
問9.自分はタバコに依存していると感じることがある
問10.タバコを吸うために仕事やつきあいなどをあきらめたことがある
合計