肝機能障害は症状が出ないことが多く、健康診断で指摘されるケースが少なくありません。本記事では、肝機能障害を放置した場合のリスク、原因や検査のタイミング、肝機能を改善する方法について解説します。

記事の概要

  • 肝機能障害は大部分が無症状
  • 肝臓以外の病気が原因になることがある
  • 肝障害が進行すると、肝硬変や肝臓がんの原因に
  • 健康な肝臓を保つには、食事、運動、節酒が大切

肝機能障害を放置すると重大な病気に

肝機能障害を長い間放置しておくと、原因によっては肝硬変や肝臓がんにつながることがあります。また、肝臓は様々な役割をもつため、肝臓の働きが悪くなると全身に悪影響が出る可能性があります。早期に原因を特定し、治療を行うことが重要です。

肝臓の働き

肝臓の主な役割

  • 胆汁の生成:小腸内の老廃物の運搬や脂肪の分解に必要
  • コレステロールを運ぶ特殊なタンパク質の生成
  • 余分なグルコースをグリコーゲンに変換して貯蔵する(グリコーゲンは後でエネルギーとしてグルコースに戻すことができます)
  • アミノ酸の血中濃度の調整
  • ビタミン類の貯蔵
  • 鉄分を貯蔵
  • 有毒なアンモニアを尿素に変換
  • 薬物や毒物を分解
  • 血液凝固を制御
  • 免疫因子を生成し、感染症への抵抗性を高める
  • 赤血球を分解し、ビリルビンを分解する

肝障害の原因は?

肝機能異常は必ずしも肝臓の病気とは限りません。原因は多岐にわたりますが、主なものは以下の通りです。

  • ウイルス性慢性肝炎(B型、C型)
  • アルコール性肝障害
  • 脂肪肝(非アルコール性脂肪肝症)
  • 自己免疫性肝炎
  • 甲状腺機能異常
  • 薬物性肝障害
  • 妊娠
  • 絶食

特にウイルス性慢性肝炎、アルコール性肝障害、脂肪肝は、肝臓癌や肝硬変のリスクとなります。

参考程度ですが、原因ごとに血液検査のどの項目が上昇しやすいかパターンがあります。

ASTやALTが主に高い場合
ALT > ASTAST > ALT
ウイルス性肝炎アルコール性
脂肪肝肝硬変
薬剤性甲状腺疾患
自己免疫性溶血
鉄過剰症筋疾患
血流障害運動
ウィルソン病
ALP、γ-GTP、ビリルビンが主に高い場合
原因が肝臓や胆管原因が肝臓以外
胆管閉塞・胆汁うっ滞骨疾患
原発性胆汁性胆管炎妊娠
原発性硬化性胆管炎成長期
薬剤性慢性腎不全
サルコイドーシスうっ血性心不全
アミロイドーシス肝臓外の悪性腫瘍
悪性腫瘍

PMID:29494096より引用・翻訳

検査を受けるべきタイミング

健康診断で肝機能異常が指摘された場合、なるべく早めに原因を特定することが重要です。肝機能異常では症状が出ないケースがほとんどですが、肝硬変まで進行すると以下のような症状がでる場合があります。

  • 疲労感やだるさが続く
  • 皮膚や目の白い部分が黄色くなる
  • 腹部の膨み
  • 腹部痛や不快感がある

どのような検査を受けたほうが良い?

肝機能障害の検査は以下のようなものがあります。

  1. 血液検査
     甲状腺機能、自己免疫抗体、肝機能障害の程度などを調べます。
  2. ウイルス性肝炎の検査
     肝炎ウイルス検診の対象者は無料で検査できます。詳しくは自治体のホームページを御覧ください。
  3. 超音波検査
     肝臓の形や内部に異常がないかを調べます。脂肪肝、肝臓がん、胆のう・胆管の病気がわかります。当院では専門の技師が行います。
  4. MRI検査/CT検査
     上記の検査で診断がつかない場合に行います。当院からは市立柏原病院などに依頼し、検査を行います。
  5. 肝生検
     肝臓に針を刺して組織を採取し、病理検査を行います。入院が必要ですので、適応となる方は専門病院に紹介します。

肝障害を改善するための方法

肝機能障害の改善方法は、原因によって異なります。以下に、一般的な対策を挙げます。

  • 原因の治療: ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎では専門医療機関での治療が必要です。
  • アルコール摂取の制限
  • 食事の改善:脂肪肝は低脂肪・低カロリーの食事をとると改善します。
  • 適度な運動:脂肪肝の改善に効果的です。
  • 肝臓に影響を与える薬剤の中止:医師と相談してお薬の変更や中止を検討します。

投稿者プロフィール

明石 祐作 Yusaku Akashi, MD, PhD
あかし内科クリニック(大阪府柏原市)の副院長です。総合内科専門医、家庭医療専門医・指導医、救急科専門医、医学博士。診療所から大病院まで、色々な医療機関で研鑽してきました(現在も継続中)。「最初に何でも相談できる医者」を理想とし、日々診療しています。