眠気だけじゃない!高血圧や心臓病をおこす睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群についての解説です。
前半にまとめを、後半に詳しい説明を掲載しています。

睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時無呼吸症候群(SAS: “サス”とも言います)とは 眠っている間に呼吸が短時間止まる病気です。睡眠時無呼吸症候群には、 “閉塞性”“中枢性”の2種類があります。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群では、のどが狭くなり閉じることで呼吸が止まります。
中枢性睡眠時無呼吸症候群では、脳が筋肉に正しい信号を送って呼吸を命令することができず、呼吸が止まってしまいます。

単に睡眠時無呼吸症候群と言った場合は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群のことを指すことが多いです。

睡眠時無呼吸症候群の人は、寝ているときに呼吸が止まっている自覚はありません。隣で寝ている人から「いびきをかいている」と言われることもあります。

主な症状は大きないびき、つかれ、日中の眠気

睡眠時無呼吸症候群の主な症状には、大きないびき、つかれやすい、日中の眠気があります。その他の症状としては、以下のようなものがあります。

  • 眠りが浅い
  • 息苦しくて目が覚めてしまう
  • 朝に頭痛、口の渇き、のどの痛みを感じる
  • 頻繁に尿意をもよおして目が覚める
  • 目覚めたときにじっくり眠れた感じがしない、ふらふらする
  • 頭がさえない、物忘れがひどい

睡眠時無呼吸症候群の人の中には、自覚症状がない人や、自分でも気づかない場合があります。疲れたり、いびきをかいたりするのが普通と感じていることもあります。

検査は簡易検査とポリソムノグラフィー

睡眠時無呼吸症候群の診断には、「睡眠検査」を行います。睡眠検査は、自宅と入院いずれでも可能です。睡眠検査では、心拍数、呼吸、その他の身体機能をモニターするさまざまな機械を用います。

通常はまず自宅での簡易検査を行い、睡眠時無呼吸症候群が疑わしいときは追加で精密PSG(ポリソムノグラフィー)を行います。

特に重要な指標は呼吸が止まったり、呼吸が弱くなる回数です。1時間あたりの回数をAHIと言い、機械が自動で計測します。AHIが5以上で睡眠時無呼吸症候群を疑います。

自宅での精密PSG(ポリソムノグラフィー)

検査の流れ

症状を改善する生活習慣

睡眠時無呼吸症候群を改善するためには、以下のようなことが有効とされます。

  • 仰向けにならないで寝る(寝ている間の姿勢は自分ではコントロールできないので、必ずしも有効とは限りません。また、一部の人にしか効果はありません)
  • 肥満の方は体重を減らす
  • アルコールを控える

治療方法は生活習慣の改善とCPAP

肥満の方には減量が有効です。しかし、体重を減らすことは難しく、睡眠時無呼吸症候群を改善するまで十分に体重を減らすのは時間がかかります。ほとんどの人は、体重を減らす努力をしている間、他の治療が必要になります。

最も効果的な治療法は、寝ている間に気道を確保する装置です。この装置を使った治療は、「CPAP(”シーパップ”と読みます。持続陽圧呼吸療法とも言います)」と呼ばれています。
CPAPでは夜間にフェイスマスクを装着します。装着感や空気の漏れ具合によって、マスクは適宜調整します。保険適応は症状が進行した人に限られ(簡易検査でAHI 40以上、精密PSGでAHI 20以上)、状態を確認するため月1回の通院が必要となります。

CPAP装置はとても効果が高い治療ですが、慣れるまで少し時間がかかります。最初はマスクのつけ心地が悪く、機械の音がうるさくて眠りづらいかもしれません。慣れてくると睡眠の質が改善し、良く眠ることができます。

マウスピースなど口の中に装着する装置もありますが、CPAPほどの効果はありません。

稀なケースですが、CPAPなどの治療で効果がないときには、気道を開くための手術を行うことがあります。手術をしても効果があるとは限らず、効果があっても症状が再発することもあります。

睡眠時無呼吸症候群は事故や高血圧、心臓病のリスク

睡眠時無呼吸症候群の人は、質の良い睡眠がとれないので、疲れやすく、注意力も低下します。そのため、交通事故などの事故に巻き込まれる危険性があります。さらに、睡眠時無呼吸症候群の人は、高血圧や深刻な心臓病になる可能性が高いという研究結果もあります。重度の睡眠時無呼吸症候群の方は、CPAP装置などの治療を受けることで、これらのリスクをある程度減らすことができます。


後半は詳細な説明です。前半よりもかなり詳しい内容になります。

睡眠時無呼吸症候群の詳しい説明

睡眠中、空気は一定のリズムで鼻⇔のど⇔肺を出入りしています。睡眠時無呼吸症候群では、この空気の流れが滞ります。
睡眠時無呼吸症候群には、閉塞性睡眠時無呼吸症候群と中枢性(非閉塞性)睡眠時無呼吸症候群の2種類があり、中には両方が混在している場合もあります。
どちらの種類の睡眠時無呼吸症候群でも、睡眠中の呼吸回数が減ります。

  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群
    のどが狭くなったり閉じたりすることで、呼吸が異常になります。
  • 中枢性睡眠時無呼吸症候群
    調節機能やリズムの変調で呼吸に異常が出ますが、のどは開いたままです。

成人の約25%が、睡眠時無呼吸症候群のリスクがあるとされます。

睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に気道がふさがる病気

のどは空気の通り道(気道)があり、話す、飲み込む、呼吸に必要な筋肉に囲まれています。睡眠中は、筋肉の活動が低下するため、気道が狭くなることがあります。
ほとんどの人では、気道が狭くなっても呼吸に影響することはありません。しかし、一部の人ではいびきの原因となり、空気の流れが悪くなったり、完全に止まってしまうことがあります。
空気の流れがなく、完全に気道が塞がれている状態を閉塞性無呼吸症候群といいます。完全には塞がっていないものの、空気の流れが滞っている状態は低呼吸と呼ばれます。睡眠時無呼吸症候群と低呼吸の両方が見られる場合もあります。

無呼吸や低呼吸のために呼吸が不十分になると、体の中の酸素濃度が低下し、二酸化炭素濃度が上昇します。気道が閉塞すると、気道を開く筋肉を動かすため目を覚ます必要があります。目が覚めると短時間動いたり、鼻を鳴らしたり、大きないびきをかくことがあります。まれに、息苦しさや窒息感を感じることがあり、息苦しさで完全に目が覚めることもあります。すぐに眠りについた場合は、目覚めたことを忘れてしまいます。

睡眠中に異常な呼吸があると、朝起床時の疲労感や日中の眠気を感じる原因となります。

肥満、あごが小さい、扁桃腺が大きい人は睡眠時無呼吸症候群になりやすい

  • あごが小さい
    あごが小さい人は口も小さいため、舌が相対的に大きく、気道がふさがりやすくなります。あごの形は遺伝的するため、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が起きやすい家系があると言われていますります。
  • 肥満
  • 扁桃肥大(特に子供の場合)
    のどの周りに脂肪や大きな扁桃があると、気道がふさがりやすくなります。

症状はいびき、つかれ、眠気、頭痛、集中力の低下など

睡眠時無呼吸症候群の主な症状は、大きないびき、疲労感、日中の眠気などです。人によってはあまり症状が出ないこともあります。一緒に寝ている人がいない場合、いびきに気づくのが難しくなります。疲労感や眠気には様々な原因がありますが、多くの場合、過労や加齢が原因とされています。そのため、本人が「受診した方が良い」と思うまでに時間がかかることもあります。

その他の症状としては、以下のようなものがあります。

  • ぐっすり眠れない
  • 窒息、窒息死、窒息死での起床
  • 朝の頭痛、口の渇き、のどの痛み
  • 尿のため頻回に起きる
  • 目覚めが悪い、うとうとする
  • 気力の低下、集中力の低下、記憶障害

症状が悪くなる要因は年齢、男性、肥満、アルコール

  • 年齢
    閉塞性無呼吸症候群はすべての年齢で起こりますが、中高年に多く見られます。
  • 男性とホルモン療法
    男性の方が2倍発症しやすく、特に中高年の男性やホルモン補充中の方に多いとされます。
  • 肥満
    肥満が高度なほど睡眠時無呼吸症候群を発症しやすくなります。
  • 薬物やアルコールによる睡眠障害
    睡眠中の呼吸を抑えるため、無呼吸の時間が長くなります。
  • 気道が狭くなるような異常(扁桃腺が大きいなど)

交通事故、心臓病、脳卒中のリスクが2倍以上に

睡眠時無呼吸症候群は、注意力の低下、集中力の低下、眠気などの原因となります。その結果、事故やミスの危険性が高くなります
重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群があると、自動車事故を起こす確率が2倍以上になると報告されています。

さらに、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を治療していない人は、高血圧、心臓発作、不整脈、脳卒中などの心血管障害のリスクが高くなります。睡眠中の心拍数や血圧が影響を受けるためとされます。

寝ているときの様子、体型、睡眠検査が診断に有用

以下のような症状、身体診察、検査が診断に有用です。

  • いびきや睡眠の質の低下
  • 首周りが太い(男性: 43 cm以上、女性: 40インチ以上)
  • あごが小さい、下が大きい
  • 血圧が高い(特に内服薬の治療効果があまりない場合)
  • 睡眠中の呼吸停止(無呼吸)、窒息、うなり声などを一緒に寝ている人が確認した

通常はまず自宅での簡易検査を行い、睡眠時無呼吸症候群が疑わしいときは追加で精密PSG(ポリソムノグラフィー)を行います。

精密PSG(ポリソムノグラフィー)は自宅または入院で行い、呼吸の努力や空気の流れ、血中酸素濃度、心拍数やリズム、様々な睡眠段階の持続時間、体位、腕や脚の動きなどを測定します。

治療の効果はCPAP>>その他の治療

睡眠時の気道確保が治療の目的になります。治療により睡眠障害の症状がなくなり、長期的な健康への影響も軽くなります。ほとんどの治療法は毎晩の使用が必要である。

  1. 持続的気道陽圧呼吸(CPAP)
    最も効果的な治療法です。機械から空気をのどに送り込み、その圧力で睡眠中に気道を開いた状態に保ちます。気密性の高いマスクを装着し、チューブで機械に接続して使います。マスク鼻の穴、鼻の上、鼻と口の間にフィットさせ、漏れを少なくする必要があります。睡眠時は昼夜を問わず、常に使用する必要があります。

CPAPの使い始めは慣れが必要です。また、機械の設定やマスクの種類は、個人に最適なものを選ぶ必要があります。ほとんどの人は治療を続けることができますが、マスクの装着不良や鼻づまりなどの問題があると、2年後には50%の人しか使い続けることができないとされます。

  1. 生活習慣の改善
  • 睡眠姿勢の変更
    眠るときに仰向けにならないようにすることで、睡眠の質が改善する可能性があります。一晩中続けるのは難しいため、十分な解決策にはなりません。
  • 減量
    肥満の人では減量が非常に有効ですが、減量を継続するにはかなりの努力を要します。
  • アルコールや鎮静剤を避ける
    アルコールは眠気を悪化させ、事故や怪我のリスクを高めます。睡眠時無呼吸症候群がある場合、日中であってもアルコールをあまり飲まない方がよいとされます。
    抗不安薬や鎮静剤は睡眠時無呼吸症候群を悪化させることがあるため、内服の仕方について主治医に相談する必要があります。
  1. その他の治療法
  • マウスピース
    マウスピースの装着で顎の位置を変えて舌と軟口蓋を前方に出し、気道の閉塞を軽減します。

    いびきの軽減には非常に有効ですが、睡眠時無呼吸症候群に対する効果は限定的です。そのため、マウスピースは、いびきの軽減が主目的である軽度の睡眠時無呼吸症候群で使用するのが良いとされます。マウスピースは歯科で作成します。

    マウスピースはCPAPほどの効果はありませんが、CPAP治療が継続できない人には代替手段となりえます。マウスピースの副作用はほとんどありませんが、長期間の使用にで噛み合わせに影響がでることがあります。
  • 鼻に装着するストリップ
    睡眠時無呼吸症候群の治療に有効であるというデータは限られています。
  • 上気道手術
    手術は成功率があまり高くないこと、リスクがあることから、最初から行うことは通常ありません。
    手術は上記の治療が継続できない、または改善しない患者さんに行います。手術を行う場合も、他の治療は継続することができます。
    外科手術は軟口蓋口蓋垂咽頭形成術(UPPP)や上下顎骨前方移動術(MMA)などの方法があります。耳鼻咽喉科や歯科口腔外科で診察を受け、手術の仕方を決定します。

参考文献

Am J Epidemiol 2013; 177:1006.
Lancet 2009; 373:82.
J Clin Sleep Med 2009; 5:263.
Sleep 2006; 29:244.
Sleep 2010; 33:1396.
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020