記事の要点
- RSウイルスは高齢者の肺炎や死亡の原因になる
- 高齢者を対象に、安全性の高いRSウイルスワクチンが承認された
- RSウイルスワクチンの接種で入院や重症化は1/4に減る
- 追加接種のタイミングは検証中
2023年8月、高齢者向けのRSウイルスワクチン(アレックスビー筋注用)が新たに承認されます。RSウイルスは子どもの気管支炎や肺炎の原因として有名で、特に生後まもない赤ちゃんでは重症になることがあります。
RSウイルスは「子どもの病気」と思われがちですが、アメリカでは毎年6,000–10,000人の高齢者がRSウイルスで死亡しています。入院した場合の死亡率は5%程度ですが、肺気腫(COPD)・喘息・心不全・脳こうそく・脳出血・糖尿病・慢性腎臓病などの持病があると、死亡率は高くなります。
RSウイルスワクチンの効果
現時点で発表されているデータによると、RSウイルスワクチンの接種で高齢者のRSウイルスでの入院や重症化が4分の1に減ります。ワクチンの研究対象者に亡くなった方がおらず、RSウイルスワクチンが死亡率を下げるかは検証できませんでした。
アウトカム | ワクチン接種 | プラセボ(偽薬) | 相対比率 (95%信頼区間) |
---|---|---|---|
気管支炎・肺炎 | 30人/12469人 | 139人/12498人 | 0.25 (0.17 - 0.38) |
医療機関の受診 | 12人/12469人 | 63人/12498人 | 0.23 (0.11 - 0.42) |
入院 | 1人/12469人 | 5人/12498人 | 0.24 (0.01 - 2.11) |
重症(酸素が必要) | 1人/12469人 | 5人/12499人 | 0.24 (0.01 - 2.11) |
死亡 | 0人/12466人 | 0人/12494人 | 計算不可 |
※相対比率はプラセボ(偽薬)と比べて、どれくらいの発生率かを示した数字。1: ワクチン接種しても発生率変わらず、0.5: ワクチン接種すると発生率が半分に減少、0.25: ワクチン接種すると発生率が25%(4分の1)に減少
RSウイルスワクチンの対象者
いち早く承認されたアメリカでは、60歳以上の方にワクチンの接種を推奨しています。
特に接種が推奨されているのは、肺気腫(COPD)・喘息・心不全・脳こうそく・脳出血・糖尿病・慢性腎臓病・血液疾患・肝臓病などの持病がある方です。
RSウイルスワクチンの接種方法
筋肉注射で1回接種します。
追加接種のタイミング、2回目以降のワクチンの必要性は検証中です。現時点で公式な推奨はでていません。
RSウイルスワクチンの費用
現時点では薬価が決定しておりません。高齢者へ接種費用の助成があるかも不明です。
詳細が分かり次第、こちらに追記します。
RSウイルスワクチンの安全性
副反応として、4%の人(25人に1人)に接種部位の痛み・腫れ・発赤・発熱・だるさ・頭痛などの症状が出ます。大部分の副反応は数日以内に自然と治ります。
参考文献
- ミクス Online. RSウイルスワクチン・アレックスビーなど5製品を審議へ 薬食審・第二部会で
- ACIP Evidence to Recommendations for Use of GSK Adjuvanted RSVPreF3 Vaccine (AREXVY) in Adults Ages 60 and Older
- Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluation (GRADE): GSK RSVPreF3 Vaccine (AREXVY)
- Use of Respiratory Syncytial Virus Vaccines in Older Adults: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices — United States, 2023
- FDA Approves First Respiratory Syncytial Virus (RSV) Vaccine
投稿者プロフィール
- あかし内科クリニック(大阪府柏原市)の副院長です。総合内科専門医、家庭医療専門医・指導医、救急科専門医、医学博士。診療所から大病院まで、色々な医療機関で研鑽してきました(現在も継続中)。「最初に何でも相談できる医者」を理想とし、日々診療しています。
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