不整脈の一種である心房細動について解説します。健康診断でも偶然見つかることのある心房細動。この記事では合併症や治療法などについて解説します。

心房細動とは?

心房細動では心臓の一部・心房が正常に動かず、血液の流れが滞(とどこお)ります。血液の流れが滞ると血栓ができやすくなり、脳卒中の可能性が高まります。心房細動は通常、65歳以上の人に発症します。心房細動には原因となる病気が存在する場合もあります。

心房細動の主な原因

  • 高血圧による心臓病
  • 心筋梗塞(心臓発作)
  • 心不全
  • 心臓弁膜症(僧帽弁逆流症や僧帽弁狭窄症など)
  • アルコール、過度の飲酒
  • 甲状腺機能亢進症
  • 薬物(心臓を刺激する薬、例:テオフィリン)
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 慢性肺疾患(特に肺気腫)
  • 肥満
  • 糖尿病
  • 慢性腎臓病

心房細動の検査は?

心房細動は心電図やホルター心電図(24時間心電図)で診断されることが多いです。最近ではスマートウォッチやスマートフォンアプリで、偶然見つかることもあります。

心房細動と診断された後は、心エコー検査(超音波)血液検査睡眠時無呼吸症候群の検査を行うこともあります。

心房細動は脳卒中のリスク!

心房細動の症状は個人差があります。軽い症状では動悸、胸の違和感、脈が飛ぶような感じ、めまい、軽い息切れなどがあります。強い症状が出ることもあり、特に呼吸困難、失神、胸痛、強い疲労感があると要注意です。

心房細動の最も重要な合併症は脳卒中です。脳卒中は左心房に血栓ができ、その一部が心臓から脳の血管に流れて詰まることで起きます。血管が詰まると脳は酸素不足となり、脳細胞がダメージを受けます。血栓は脳以外にも、目、腎臓、脊椎、または腕や足の血管を詰めてしまうことがあります。

血栓は全身の臓器に悪影響を与える可能性があります。

血栓症(脳卒中)の予防

脳卒中など、血栓による合併症は血液を固まりづらくするお薬(抗凝固薬:こうぎょうこやく)を服用すると予防できます。

お薬を飲んだほうが良いかは、CHADS2スコアという計算式で判定します。

血液サラサラのお薬が必要か判定!

※対象者は心房細動の診断を受けた方です。

・75才以上:

・心不全がある:

・高血圧がある:

・糖尿病がある:

・過去に脳卒中や脳梗塞を起こした:

CHADS2スコア:

抗凝固薬の推奨:

抗凝固薬を服用で脳卒中リスクは約50~70%減少します。過去にはワルファリンが使用されてきましたが、出血リスクが高い、納豆などビタミンKが多い食品が食べられない、定期的な血液検査が必要、といった欠点がありました。

ダビガトラン(商品名:プラザキサ)、アピキサバン(商品名:エリキュース)、エドキサバン(商品名:リクシアナ)、リバロキサバン(商品名:イグザレルト)は比較的新しい抗凝固薬で、ワルファリンと同等の効果があります。定期的な血液検査や食事制限は必要なく、出血リスクはワルファリンより低いとされます。ただし、ワルファリンとは違い、心臓弁膜症を原因とする心房細動では使用できません。

心房細動の治療方法

脳卒中・血栓の予防だけでなく、心房細動そのものの治療を行うことがあります。治療はリズムコントロールレートコントロールの2つのオプションがあります。どちらの治療を行うかは、患者さんの全身状態や合併症のリスクによって異なります。

・リズムコントロール

心房細動を止めて、正常な脈拍に戻す治療です。カルディオバージョン(電気ショック)、抗不整脈薬、アブレーション、外科手術などがあります。リズムコントロールの利点は、症状の軽減や心機能の改善が期待できますが、副作用や再発リスクがあります。

最近、アブレーション治療が積極的に行われるようになってきました。カテーテル(血管の中や心臓に通す細い管)で不整脈を起こす心臓組織を破壊し、心房細動を根本的に治療します。若年の方や、発症間もない方には良い適応となります。

・レートコントロール

脈拍を抑えるお薬を使い、心拍数を正常範囲に抑えることを目指します。心房細動を根本的に治療するわけではないため、脳卒中のリスクは残ります。通常は抗凝固薬を併用します。

まとめ

心房細動は無症状〜強い症状まで様々です。健診で偶然見つかることもあります。適切な治療方法は個々の状況によって異なり、複雑です。心房細動と言われた方は、まず医師とご相談ください。

投稿者プロフィール

明石 祐作 Yusaku Akashi, MD, PhD
あかし内科クリニック(大阪府柏原市)の副院長です。総合内科専門医、家庭医療専門医・指導医、救急科専門医、医学博士。診療所から大病院まで、色々な医療機関で研鑽してきました(現在も継続中)。「最初に何でも相談できる医者」を理想とし、日々診療しています。