当ページでは各種ワクチンの詳細を記載しています。海外渡航者向けのワクチンについては、厚生労働省検疫所(FORTH)外務省海外安全ホームぺージ、および米国のCenters for Disease Control and Preventionにある情報を元に作成いたしました。

成人の推奨ワクチン

成人に推奨されているワクチンのスケジュールです(渡航ワクチンを除く)。米国予防接種の実施に関する諮問委員会日本プライマリケア学会などの推奨に基づき作成しています。

小児ワクチンのスケジュールは日本プライマリケア学会Know VPD!に詳しい記載があります。

成人で推奨される予防接種スケジュール表

インフルエンザ

感染した場合

高熱・咳・節々の痛みなどを起こします。通常は5日程度で治癒します。お子様ではまれに急性脳症、高齢の方の場合や持病がある方は肺炎の原因となり、重症化することがあります。 

感染経路

感染した人の咳などから放出された、空気中の飛沫を吸い込むことで感染します。

対象者

生後6か月以上の方が対象です。理想的には10月の終わりまでに、接種を済ませておくことが望ましいとされます。
海外渡航にいかれる方では、渡航先が冬の場合に接種をお勧めします。
-流行時期
 北半球:10-5月、南半球:4-9月、(亜)熱帯:通年 

接種方法と回数

皮下注射、1回

接種期間

日本では6か月~12歳は2回、13歳以上は1回または2回接種が推奨されています。
一方、世界保健機関(WHO)においては9歳以上は1回接種が推奨されています。
また、米国では、6か月~8歳では以前に2回接種を受けたことがある場合は1回、2回接種を受けたことがない場合は1回が推奨されています。

予防接種の効果

1回接種をすると最大で約60%の予防効果があります。血液中の抗体を作るワクチンであり、上気道感染を完全には防御できませんが、感染した後の重症化
を防ぐ効果は期待できます。接種後1-2週間で効果が出始め、5ヶ月程度で減弱します。

接種の副作用

接種した部位の痛みや腫れ、倦怠感や頭痛が出ることがあります。 

接種できない方

*以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方
ワクチンは発育鶏卵の尿膜腔で増殖したインフルエンザウイルスを原材料として製造されておりますので微量の鶏卵由来成分が残存している可能性があります。

卵アレルギーがあっても通常接種には問題ありませんが、副作用とのバランスを考慮し、接種を判断致します。

肺炎球菌: ニューモバックス

感染した場合

肺炎・髄膜炎・中耳炎・副鼻腔炎を起こす細菌で最も多いと言われており、時に重症になります。
乳幼児、高齢者、免疫不全のある方(脾臓を手術で摘出した場合など)では、重症感染症を発症する可能性があります。

感染経路

保菌した人の咳や痰を吸い込むことで感染します。

対象者

65歳以上の方、2-64歳で免疫不全(脾臓摘出など)・肺病変・心不全などの持病がある方に推奨されています。

65歳以上では公費の対象ワクチンとなります。また、脾臓摘出後の方では保険適応になります。

肺炎球菌は何十種類もありますが、そのうち人で最も感染症を起こしやすい23種類に効果があります。
プレベナー13より効果がある肺炎球菌の種類は多いですが、ニューモバックスで得られる免疫は弱く、抗体も5年で減弱します。
日本の肺炎球菌の疫学を考えると、現状ではプレベナー13とニューモバックスの両方接種をおすすめします。

接種方法と回数

皮下注射または筋肉注射、1回

接種期間

合計1回接種します。以後、必要に応じて5年毎の追加接種となります。

プレベナー13と併用する場合、先にプレベナー13の予防接種を行い、1年後にニューモバックスを追加接種するのが最も効果的とされます。
ニューモバックスを先に接種した場合は、1年後にプレベナー13を接種します。

脾臓摘出後の方は、プレベナー13を接種した8週後にニューモバックスを接種します。

予防接種の効果

抗体価は徐々に減少するため、特に免疫不全がある方では5年ごとの接種が推奨されております。

接種の副作用

接種した部位の痛みや腫れが出ることがあります。

接種できない方

以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方

肺炎球菌: プレベナー13・バクニュバンス

感染した場合

肺炎・髄膜炎・中耳炎・副鼻腔炎を起こす細菌で最も多いと言われており、時に重症になります。
乳幼児、高齢者、免疫不全のある方(脾臓を手術で摘出した場合など)では、重症感染症を発症する可能性があります。

感染経路

保菌した人からの咳や痰を吸い込むことで感染します。

対象者

日本の肺炎球菌の疫学を考慮し、成人で肺炎球菌ワクチンが必要な方は、プレベナー13(またはバクニュバンス)とニューモバックスの両方接種をおすすめします。

プレベナー13(PCV13)

肺炎球菌は何十種類もありますが、そのうち人で最も感染症を起こしやすい13種類に効果があります。
ニューモバックスより高い予防効果があり、抗体は長期間持続します。

生後2か月以上5歳以下の乳幼児、65歳以上の方、免疫不全のある方(脾臓摘出を受けている方など)に接種が推奨されています。

バクニュバンス(PCV15)

プレベナー13と同じ系統のワクチンです。プレベナー13より2種類多い、15種類に対応しています。

成人ではプレベナー13よりも推奨されています。米国では乳幼児でもプレベナー13と並んで推奨されていますが、日本では小児での使用は承認されていません。

接種方法と回数

皮下注射(小児)または筋肉注射(成人)、1回

接種期間

合計1回のみ接種します。

65歳以上の方は1年後にニューモバックスの追加接種をお勧めします。
脾臓摘出後の方は、プレベナー13(またはバクニュバンス)を接種した8週後にニューモバックスを接種します。

小児は定期接種に準じ、複数回の接種が必要です。

接種の副作用

接種した部位の痛みや腫れが出ることがあります。

接種できない方

以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方

破傷風

感染した場合

口が開けづらくなる症状から始まり、全身の筋肉が強直・痙攣します。正常な呼吸ができなくなる、重篤な不整脈が起きるなど様々な合併症が起こり、11%の方が死亡すると報告されています。

感染経路

けがをした部分から感染をします。特に土壌や錆びた金属によるけが、汚染がひどいけがに多いとされます。ただし、感染者の4人に1人は怪我の自覚がないと言われています。

対象者

本邦でも感染する可能性があります。1968年以前に誕生された方は、定期接種の対象となっておらず、免疫がないため全員接種をお勧めいたします。
過去に定期接種を受けている方では10年毎の接種が推奨されています。特に土壌に触れる業務に従事している方で推奨されます。

接種方法と回数

筋肉注射または皮下注射、1~3回(過去の接種回数による)

接種期間

今までに接種を受けたことがない方は3回接種が必要です。
1回目の3-8週後に2回目、2回目からさらに6ヵ月以上あけて3回目の追加接種を行います。
過去に3回の予防接種(定期接種を含む)を受けた方は、1回のみ接種します。 

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予防接種の効果

3回の接種で100%近い予防効果がありますが、10年ほどで抗体が減弱します。

接種の副作用

接種した部位の痛みや腫れが出ることがあります。

接種できない方

以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方

麻疹(はしか)

感染した場合

咳・鼻水・発熱・眼の充血で始まり、その後に発疹が出現します。高い伝染性により周囲の人へ伝播すると共に、脳炎を発症し、重篤な後遺症を残すことがあります。

感染経路

空気感染のため、感染者とのわずかな接触でも感染します。人込みなどですれ違うだけでも感染する可能性があります。

対象者

2回接種を受けていない方(昭和54年~平成2年生まれの方など)は、全員接種をお勧めします。
日本国内での感染例は少ないですが、流行が見られる発展途上国に渡航される場合は接種をお勧めします。
医療従事者の場合、2回接種もしくは、抗体価が低い場合には追加接種を行う場合があります。

接種方法と回数

皮下注射、1~2回(過去の接種回数による)

接種期間

今まで接種したことがない方や抗体のない方は2回、その他の方は1回接種します。
2回目の接種を行う場合は4週間後に行います。小児は定期接種に準じて接種します。

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予防接種の効果

2回の接種でほぼ100%の予防効果がありますが、時間と共に減弱致します。

予防接種での注意事項

生きたウイルスを抗原とするため、女性では接種後は2ヶ月間の避妊が必要です。
特に接種後1か月以内に妊娠した場合、頻度は少ないながらも胎児に影響が出る可能性があるため、産婦人科での相談をお勧めします。

接種の副作用

発熱、発疹、関節痛が出ることがあります。

接種できない方

  • 以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方
  • 妊娠中の方、免疫不全と診断されている方、免疫抑制剤を内服中の方
  • カナマイシンあるいはエリスロマイシンでアナフィラキシーの既往のある方

風疹(ふうしん)

感染した場合

感染した本人は発熱や皮疹など軽い症状ですむ事がほとんどです。しかし、妊娠初期に感染した場合、赤ちゃんの先天性風疹症候群(難聴、視力障害、心奇形、精神遅滞など)が高い確率で起こります。

感染経路

空気中の飛沫を吸い込んだり、感染者との接触で感染します。感染者に症状が出ないことがあり、気づかない間に感染が広がることもあります。

対象者

2回接種を受けていない方(昭和37年~平成2年生まれの方など)は、全員接種をお勧めします。特に妊娠を考えている方が近くにいらっしゃる場合、接触のある方全員に接種をお勧めします。
昭和37年4月2日~昭和54年4月1日の男性は、抗体検査を受けたうえで、必要であれば無料で予防接種を受けることができます。

接種方法と回数

皮下注射、1~2回(過去の接種回数による)

接種期間

今まで接種したことがない方、抗体のない方は2回、その他の方は1回接種します。
2回目の接種を行う場合は4週間後に行います。小児は定期接種に準じて接種します。

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予防接種の効果

2回の接種でほぼ100%の予防効果がありますが、時間と共に減弱致します。

予防接種での注意事項

生きたウイルスを抗原とするため、女性では接種後は2ヶ月間の避妊が必要です。
特に接種後1か月以内に妊娠した場合、頻度は少ないながらも胎児に影響が出る可能性があるため、産婦人科での相談をお勧めします。

接種の副作用

発熱、発疹、関節痛が出ることがあります。

接種できない方

  • 以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方
  • 妊娠中の方、免疫不全と診断されている方、免疫抑制剤を内服中の方
  • カナマイシンあるいはエリスロマイシンでアナフィラキシーの既往のある方

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

感染した場合

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は感染してから2~3週間後に発症し、唾液腺が腫れるのが特徴です。
通常1~2 週間で軽快しますが、髄膜炎、脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などを合併すると悪化することがあります。

感染経路

感染者が出す飛沫中のウイルスを吸い込んで感染します。

対象者

過去に予防接種を行っていない方(特に子供と多く接触する方)、医療従事者などで接種が推奨されます。
小児では不妊症や難聴の原因になる事が多いため、強く接種をおすすめします。

なお、インフルエンザなどでも耳下腺が腫れることがあるため、「過去にかかった」は当てになりません。抗体価を調べるか、予防接種をすましておくことが必要です。

接種方法と回数

皮下注射、1~2回(過去の接種回数による)

接種期間

今まで接種したことがない方や抗体のない方は2回、その他の方は1回接種します。
2回目の接種を行う場合は4週間後に行います。小児は定期接種に準じて接種します。

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予防接種での注意事項

生きたウイルスを抗原とするため、女性では接種後は2ヶ月間の避妊が必要です。

予防接種の効果

流行性耳下腺炎に関しては2回の接種でほぼ100%の予防効果があります。

接種の副作用

接種した部位の痛みや腫れ、発疹、発熱が出ることがあります。

接種できない方

  • 以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方
  • 妊娠中の方、免疫不全と診断されている方、免疫抑制剤を内服中の方
  • カナマイシンあるいはエリスロマイシンでアナフィラキシーの既往のある方

麻疹・風疹・流行性耳下腺炎混合(MR、MMR)

麻疹・風疹・流行性耳下腺炎には2種類の混合ワクチンがあります。

  • 麻疹・風疹混合(MR): ミールビック
  • 麻疹・風疹・流行性耳下腺炎(MMR、輸入ワクチン):Priorix

感染した場合

  • 麻疹:非常に高い伝染性があり、脳炎など重篤な後遺症を残すことがあります。
  • 風疹:発熱や皮疹を生じます。妊娠中に感染すると、胎児の先天性障害(先天性風疹症候群) の原因となります。
  • 流行性耳下腺炎:唾液腺の腫脹が特徴的です。脳髄膜炎や不妊症(睾丸炎/精巣炎)・難聴などの合併症を起こすことがあります。

ワクチン対象者

過去に予防接種を行っていない方(特に子供と多く接触する方や海外渡航される方)、医療従事者などで接種が推奨されます。

国内では、麻疹・風疹混合ワクチン(MR)と流行性耳下腺炎の単独ワクチンが一般的に使われています。米国など海外では、麻疹・風疹・流行性耳下腺炎混合ワクチン(MMR: Priorix)が定期予防接種として実施されており、留学などの際に接種を求められる場合があります。

接種方法と回数

皮下注射、1~2回(過去の接種回数による、MRとMMR共通)

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接種の副作用

発熱、発疹、関節痛、接種した部位の痛みなどが出ることがあります。副作用の頻度は麻疹・風疹・流行生耳下腺炎の単独ワクチンと変わらないとされます。

接種できない方

以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方、 妊娠中の方、免疫不全と診断されている方、免疫抑制剤を内服中の方、 カナマイシン・ネオマイシン・エリスロマイシンでアナフィラキシーの既往のある方

水痘(水ぼうそう)

感染した場合

全身に水疱が出現します。水疱への細菌感染、肺炎、脳炎を合併し、重症となることがあります。

感染経路

感染者の水疱に含まれるウイルスを吸い込んだり、触れたりすることで感染します。

対象者

過去に予防接種を行っていない方、特に医療従事者などで接種が推奨されます。

接種方法と回数

皮下注射、1~2回(過去の接種回数による)

接種期間

今まで接種したことがない方や抗体のない方は2回、その他の方は1回接種します。
2回目の接種を行う場合は4週間後に行います。小児は定期接種に準じて接種します。

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予防接種の効果

水痘に関しては2回の接種でほぼ100%の予防効果があります。

予防接種での注意事項

生きたウイルスを抗原とするため、女性では接種後は2ヶ月間の避妊が必要です。
特に接種後1か月以内に妊娠した場合、頻度は少ないながらも胎児に影響が出る可能性があるため、産婦人科での相談をお勧めします。

接種の副作用

接種した部位の痛みや腫れ、発疹、発熱が出ることがあります。

接種できない方

  • 以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方
  • 妊娠中の方、免疫不全と診断されている方、免疫抑制剤を内服中の方
  • カナマイシンあるいはエリスロマイシンでアナフィラキシーの既往のある方
    *免疫不全の方は免疫能が改善してから接種可能となります。    

帯状疱疹

感染した場合

水痘(水ぼうそう)と同じウイルスが原因で、帯状疱疹が起こります。最初の感染では水痘(水ぼうそう)が起こり、回復した後ウイルスは神経の中に潜伏します。
神経に潜伏したウイルスは、普段は免疫に抑えられて発症しません。しかし、体力の低下・ストレス・高齢など免疫が落ちたときに、活発化することがあります。
潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが活発化し、発症した状態を帯状疱疹といいます。

帯状疱疹では体の一部に痛みを伴う水疱が出現し、神経痛として長期間残ることがあります。80歳以上の方は3人に1人が発症すると言われ、50歳以上の方は発症率が高くなるため、接種が推奨されています。

感染経路

以前に感染していた水痘ウイルスが、免疫低下時に再活性化して発症します。

対象者

50歳以上の方で全員に推奨されています。

18歳以上で免疫機能低下がある方を含め、帯状疱疹を発症するリスクが高いと考えられる場合も接種対象となります(2023年6月26日に承認)。

ワクチンの種類

不活化ワクチン (シングリックス)と生ワクチンの2種類があります。

接種方法と回数

不活化ワクチン (シングリックス):筋肉注射、2回

生ワクチン:皮下注射、1回

接種期間

  • 不活化ワクチン (シングリックス):2回目は1回目の2か月後
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  • 生ワクチン:1回

予防接種の効果

不活化ワクチン (シングリックス)

  • 発症を予防する効果:すべての年代で最初の1年は90%以上、3年後も85%の予防効果があるとされます。
  • 発症した場合でも神経痛を予防する効果:91%、70歳以上に限ると89%です。

生ワクチン

  • 発症を予防する効果:50歳代は70%、60歳代で60%、70歳代では40%の予防効果とされ、年齢がたつほど効果は減弱します。3年経過すると30%程度まで予防効果は減弱します。
  • 発症した場合でも神経痛を予防する効果:60歳以上で65%とされます。

接種の副作用

接種した部位の痛みや腫れ、発疹、発熱が出ることがあります。シングリックスの方が疼痛、発熱の頻度が高いとされます。

接種できない方

  • 不活化ワクチン (シングリックス)
    • 以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方
  • 生ワクチン
    • 以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方
    • カナマイシンあるいはエリスロマイシンでアナフィラキシーの既往のある方
    • 妊娠中の方、免疫不全と診断されている方、免疫抑制剤を内服中の方
      *免疫不全の方は免疫能が改善してから接種可能となります。

A型肝炎: エイムゲン・Havrix

感染した場合

小児は軽症例が多いですが、成人は発熱やだるさ、嘔吐などの症状に加え、80%で黄疸(肝臓がダメージを受ける)などの症状が出ます。
通常は1-2か月で回復しますが、まれに劇症肝炎を発症することがあり、死亡例も報告されています。

感染経路

汚染された食事・水の摂取、感染した人との濃厚接触で感染します。性交渉や輸血でも感染することがあります。

対象者

流行地域に渡航する1歳以上が対象となります。発展途上国へ渡航される方へは接種が推奨されます。米国など、流行が少ないとされている地域でも、時折集団感染が報告されています。

A型肝炎は発展途上国のほとんどで流行しています。
A型肝炎の流行地域

接種方法と回数

エイムゲン: 筋肉注射または皮下注射、3回

Havrix 1440: 筋肉注射、2回

接種期間

エイムゲン: 合計3回接種します。2-4週間の間隔で2回接種し、24週(6ヵ月)後に3回目の追加接種を行います。

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Havrix: 合計2回接種します。1回目の接種から、6ヶ月開けて追加接種をします。

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エイムゲンは2回、Havrixは1回の接種で抗体陽転率は100%とされます。長期的(10年間)に免疫を保つためにエイムゲンは3回、Havrixは2回の接種が必要です。

過去に接種している方は、接種歴によって必要分を追加接種します。

予防接種の効果

3回接種をするとほぼ100%の予防効果があり、5年以上の予防効果があります。
10年以上の流行地域での滞在が続く場合には抗体価を確認し、低下している場合には1回追加接種を行います。

接種の副反応

接種した部位の痛みや腫れ、倦怠感や頭痛が出ることがあります。

接種できない方

以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方

B型肝炎: ヘプタバックス・ビームゲン

感染した場合

急性肝炎を発症した場合、死亡率は1%程度と報告されています。ウイルスが肝臓の中で残って長期間感染し続けることがあり(慢性肝炎)、肝硬変や肝癌のリスクとなります。

感染経路

感染力が高いと知られており、性交渉や感染した人の体液(特に血液)に触れることで感染します。保育園内での集団感染も国内で報告されています。

対象者

生後2か月以上の方全てが対象となり、定期接種の対象となっています。過去に予防接種を行っていない方、特に血液・体液に触れる仕事(医療従事者など)で接種が推奨されます。

接種方法と回数

筋肉注射または皮下注射(皮下注射だと抗体が付きづらいため、10歳以上は筋肉注射を推奨します)、3回

接種期間

合計3回接種します。4週間隔で2回接種し、20~24週(6ヵ月)後に追加接種を行います。
医療従事者の場合は3回目接種から4-8週後に抗体検査を行い、抗体が付いたことを確認します。抗体が付いていない場合は、もう一度3回接種を行います。

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予防接種の効果

3回接種で約90%の予防効果があり、抗体獲得後は生涯にわたり効果が持続致します。

接種の副作用

接種した部位の痛みや腫れ、倦怠感や頭痛が出ることがあります。

接種できない方

以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方

腸チフス: Typbar TCV・Typhim Vi

感染した場合

感染して1~3週間は症状がなく、その後、高熱、頭痛、全身のだるさ、発疹、便秘、下痢などの症状が現れます。重大な症状として、腸から出血したり、腸に穴が開いたりすることがあります。

感染経路

感染したヒトの便や尿に汚染された水、氷、食べものを取ることで感染します。ごく少量の菌によって感染することもあります。

対象者

発展途上国、特にインドなどの南アジア地域に渡航される方に推奨します。ワクチンの種類で、接種可能な年齢が異なります。

Typer TCV: 生後6ヶ月〜45歳
Typhim Vi: 2歳以上

腸チフスはインドと周辺国を中心に、世界中で流行しています。

接種方法と回数

筋肉注射、1回(Typbar TCV、Typhim Vi)

接種期間

1回のみ接種します。渡航直前でも接種可能です。

予防接種の効果

1回接種をすると最大で約80%の予防効果があると報告されています。パラチフスには効果がありません。引き続き流行地に滞在され、予防効果を持続させるためには2-3年毎の接種が推奨されています。

接種の副作用

接種した部位の痛みや腫れが出たり、発熱することがあります。

接種できない方

以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方

狂犬病: ラビピュール・ChiroRab

感染した場合

発症した場合、ほぼ全例が死亡します。感染から数年後に発症することもあります。

感染経路

感染した動物に噛まれて感染します。ほとんどの方が犬にかまれて感染していますが、まれにコウモリなど別の哺乳類にかまれて感染した事例も報告されています。

対象者

出生直後でも接種可能です。感染リスクがある国への海外渡航者にお勧めします。
動物にかまれた後に、暴露後予防として接種を行うことがあります。日本国内では狂犬病の発生例はないため、通常は海外で動物にかまれた方が対象となります。

狂犬病は一部の国を除き、世界中で発症例が報告されています。

接種方法と回数

筋肉注射、3回(ラビピュール、ChiroRab共通)

接種期間

暴露前予防(動物に噛まれるに受ける予防接種)では、合計3回接種します。1回目の後、7日後、21-28日後に追加接種します。
世界保健機関(WHO)は2回接種(初回、7日後)を推奨していますが、抗体持続期間に関する検討が十分でないこと、日本やメーカーは承認していないことから、現状では3回接種をお勧めします。

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暴露後予防(動物に噛まれたに受ける予防接種)は以前に予防接種を受けているかで、接種回数が異なります。

  • 暴露前に予防接種を受けている場合
    1回目を0日とし、3日目に2回目を接種
  • 暴露前に予防接種を受けていない場合
    • 4回接種法:1回目を0日とし、0日に接種部位を変えて2箇所に1回ずつ、その後7、21日後に計4回接種
    • 5回接種法:1回目を0日とし、その後3、7、14、28日後に計5回接種
    • 6回接種法:1回目を0日とし、その後3、7、14、30、90日後に計6回
      ※効果はいずれの方法でも同等とされます。

予防接種の効果

3回接種後は、生涯にわたり免疫が持続します。狂犬病に感染した動物に噛まれない限り、追加接種は不要です
※獣医師など、特殊な場合を除く

暴露後予防のみでも予防できますが、暴露前予防をうけている場合はほぼ100%の予防効果となります。

曝露後の感染予防について

感染が疑われる動物に噛まれた場合は直ちに現地の病院を受診し、追加の予防接種を受けてください。
動物に噛まれる前に予防接種を受けていない場合、予防接種に加えて狂犬病免疫グロブリンの投与が必要ですが、国内での入手は困難です。

接種の副作用

接種した部位の痛みや腫れが出ることがあります。

接種できない方

以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方

日本脳炎

感染した場合

およそ1000人に1人が発症し、発症した方の20~30%が死亡するといわれています。また、生存者の30~50%に精神障害などの後遺症が残るとされます。

感染経路

豚がウイルスを保有しており、豚を刺した蚊に刺されて感染します。

対象者

生後6か月以上の方で、流行地域(東南アジア・日本)で家畜(ブタ)などと濃厚接触する方で、過去に十分な日本脳炎ワクチンの接種を行っていない方が対象となります。
30歳代以降は予防接種を受けていても抗体保有率は低いことが報告されていますので、流行地域に行かれる場合は接種をお勧めします。

日本脳炎は東南アジアから南アジアにかけて流行しています。

接種方法と回数

皮下注射、1~3回(過去の接種回数による)

接種期間

今まで接種したことがない方は3回接種を行います。
1回目から1-4週間後に2回目の接種を行い、3回目の接種は2回目から6か月以上あけて(標準的には1年後)行います。

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今までに3回以上接種している方は、1回接種のみです。

小児は定期接種に準じて接種します。

予防接種の効果

2回接種で90%、3回接種でほぼ100%の予防効果があると報告されています。

接種の副作用

接種した部位の痛みや腫れが出ることがあります。 

接種できない方

以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方

髄膜炎菌: メナクトラ・メンクアッドフィ

感染した場合

髄膜炎や菌血症を起こし、重症化することが多いと報告されています。発症すると約10-15%の方が死亡するとされます。

感染経路

空気中の飛沫を吸い込んだり、感染者との接触で感染します。

対象者

脾臓摘出後や脾機能低下症の方に推奨します。
渡航者では、2歳以上の方で流行地域(特にアフリカの髄膜炎ベルト)へ渡航する方、寮で生活をされる方、メッカ巡礼(ハッジ, Hajji)でサウジアラビアへ入国される方にお勧めします。
日本でも稀ながら感染することはあります。

髄膜炎菌はアフリカの髄膜炎ベルトと呼ばれる、サハラ地域で特に流行しています。

接種方法と回数

筋肉注射、1回

接種期間

脾臓摘出後または脾機能低下症の方は、1回目を接種した8週間後に2回目を行います。
その他の方は、1回のみ接種します。

予防接種の効果

1回接種をすると最大95%の予防効果があると報告されています。
予防効果を持続させるためには、成人は5年後に追加接種が必要です。

小児は対象年齢によって異なります。

接種の副作用

接種した部位の痛みや腫れ、倦怠感や頭痛が出ることがあります。

接種できない方

  • 以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方
  • 妊娠中の方や過去にギラン・バレー症候群を発症したことがある方は注意が必要です。

ダニ媒介脳炎

感染した場合

原因となるダニは数種類あり、感染したウイルスの種類によって重症度は異なります。ヨーロッパで流行しているウイルス(中部ヨーロッパ脳炎)は2%未満の死亡率ですが、ロシア(ロシア春夏脳炎)では20-40%の死亡率が報告されています。

感染経路

流行地域のダニに刺されることで感染します。

対象者

流行地域(シベリア、バルト三国、オーストリア、スイス、ドイツ、東ヨーロッパなど)へ渡航し、野外活動が多い方や長期滞在される方が対象となります。

1歳以上が対象となります。一部の国では小児の定期接種として行われています。

ダニ媒介脳炎分布図

接種方法と回数

筋肉注射、3回

※日本承認のワクチンはないため、輸入ワクチンのみとなります。

接種期間

1回目から1-3ヶ月後に2回目の接種を行い、3回目の接種は2回目から5-12か月後に行います。

急いで接種する必要がある場合、2回目は1回目の14日後に行います。

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予防接種の効果

ほぼ100%の予防効果があると報告されています。予防効果を持続させるためには、3回目の3年後に追加接種をした後、後5年ごとに接種が必要です。

接種の副反応

接種した部位の痛みや腫れが出ることがあります。

接種できない方

  • 以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方
  • 卵に重篤なアレルギーがある方

ポリオ

感染した場合

無症状の場合もありますが、発症すると手足の麻痺が後遺症として残ることもあります。 

感染経路

感染した人との濃厚接触や生ワクチンの接種による感染が報告されています。

対象者

定期接種を受けていない全ての方が対象となります。
定期接種をすでに受けている方は、流行地域に渡航する場合に推奨されています。
生後3ヶ月以上の乳児は定期接種の対象となっています。

接種方法と回数

皮下注射、1~4回(過去の接種回数による)

接種期間

今まで接種したことがない方は4回、過去に接種したことがある方は1回接種します。
3週間以上の間隔で3回接種し、3回目から6ヶ月以上あけて4回目を接種します。
小児は定期接種に準じて接種します。

予防接種の効果

100%近い予防効果があります。生涯効果が持続致しますが減弱するため、流行国に渡航する前には1回再接種が必要です。

接種の副反応

接種した部位の痛みや腫れが出ることがあります。

接種できない方

以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方

成人用三種混合 (Tdap)

ジフテリア(D:diphteria)・百日咳(P:pertussis)・破傷風(T:tetanus)の混合ワクチンです。小児用のDPTと比べ、Tdapは成人用にジフテリアと百日咳の抗原を減らして副反応を少なくしています。

感染した場合

  • ジフテリア:発熱やのどの痛みから始まり呼吸困難をきたし、窒息することがあります。
  • 百日咳:風邪のような症状の後、数週間~数か月にわたり咳が続きます。新生児が感染した場合、重症化することがあります。
  • 破傷風:全身の筋肉が硬直し、不整脈や呼吸障害を起こします。死亡率は高いとされます。

対象者

特に推奨となる対象者は、以下となります。

  • 新生児と接触する機会が多い方
  • 5-7歳
  • 11-12歳(定期接種である二種混合の代わり)
  • 妊娠中
  • 海外留学(米国、欧州、オーストラリアなどに留学される方)

成人の方全てに推奨されています。百日咳の予防のため、新生児と接触する機会が多い方には特に接種をお勧めします。

百日咳は就学期ころから抗体が弱くなるため、5-7歳で追加接種が推奨されています。
また、11-12歳に定期接種として受ける二種混合(DT)は百日咳が含まれないため、代わりに三種混合(DPTやTdap)を受けた方が良いとされます。

海外では新生児の百日咳を防ぐことを目的に、妊娠中の三種混合の接種が推奨されています。妊娠中に接種することでお母さんにできた百日咳の抗体が赤ちゃんにも移り、生まれて間もない時期の百日咳を防ぎます。

妊娠中の安全性は輸入ワクチンのTdapで数多く検証されており、お母さん・赤ちゃん共に悪い影響はないと証明されています。日本の三種混合(DPT)も妊娠中の投与は可能ですが、Tdapよりも安全性の検証が少なく、有益性が高い場合に限られます。

接種方法と回数

小児期に三種混合を4回接種済の場合

筋肉注射、1回

過去に全く接種したことがない場合

過去に全く接種したことがない場合は3回。

2回目は4週後、3回目は2回目から6−12ヶ月後に接種します。2回めと3回目は破傷風単独ワクチンで代用可能です。

4回接種しておらず、途中で終了している場合は相談の上で接種回数を決めます(期間がかなり空いている場合は3回接種が無難です)。

接種期間

百日咳を予防として接種する場合、もしくは二種混合の代わりに接種する場合は、1回のみ接種します。
小児では、定期接種に準じて接種を行います。

接種の副反応

種した部位の痛みや腫れが出ることがあります。

接種できない方

以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方

子宮頸がん、ヒトパピローマウイルス

子宮頸がんの原因

子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって発症します。子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスは15種類が確認されており、中でも16型と18型が7割を占めるとされます。

感染経路

主に性行為で感染します。性行為を行う女性の85%が、生涯で一度はHPVに感染すると報告されています。

ワクチンの種類

  • サーバリックス(2価:公費対象):子宮頸がんの原因として最も多い、16型と18型に高い予防効果を発揮します。
  • ガーダシル(4価:公費対象):16型、18型に加え、肛門がん、尖圭コンジローマの原因となる6型と11型にも予防効果があります。子宮頸がんの予防効果は、サーバリックスと同等されます。
  • シルガード9(9価:自費接種):子宮頸がんの原因となる90%のヒトパピローマウイルス(16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型)、尖圭コンジローマの原因となる6型、11型に予防効果があります。9価ワクチンが最も推奨されています。

対象者

ガーダシルとシルガード9は9歳以上で男女ともに接種可能です。サーバリックスは10歳以上の女性が対象になります。

定期接種は小学校6年~高校1年で行います。

なお、米国では26歳までの方全員に接種が推奨されています。27~45歳の方でも予防接種の効果はありますが、すでにヒトパピローマウイルスに感染していることが多く、効果はやや限定的です。

接種方法と接種期間

いずれも筋肉注射

サーバリックス(2価ワクチン)

合計3回接種します。1回目の接種を行った1か月後に2回目を、6か月後に3回目の接種を行います。

ガーダシル(4価ワクチン)

1回目の接種を行った2か月後に2回目を、6か月後に3回目の接種を行います。

シルガード(9価ワクチン)

接種を始める年齢によって、接種回数が異なります。9−14歳については、2回の接種でも十分な予防効果が報告されています。

シルガード9のスケジュールは、15歳未満に開始した場合と15歳以降に開始した場合で異なります。

・接種開始が9歳〜14歳

2回接種:1回目の接種を行った6か月後に2回目の接種を行います。

・接種開始が15歳以上

3回接種:1回目の接種を行った2か月後に2回目、1回目から6か月後に3回目の接種を行います。

予防接種の効果

ヒトパピローマウイルスの感染だけでなく、子宮頸がんを90%予防すると報告されています。

接種の副作用

接種した部位の痛み(9割)、発赤(5割)、腫れ(4割)が出ることがあります。
倦怠感、筋肉痛、頭痛が半数に起こるとされます。

ワクチンの接種を受けた後に、広い範囲に広がる痛みや、手足の動かしにくさ、不随意運動(動かそうと思っていないのに体の一部が勝手に動いてしまうこと)などの多様な症状が起きたと過去に報道されました。しかし、これら症状はワクチンを打っていない方にも、同程度の頻度で起きることが研究で分かっています。現在では「ワクチンの接種による副作用とは考えにくい」と結論付けられています。

接種できない方

以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方

インフルエンザ桿菌(ヒブ)

感染した場合

小児で感染することが多く、肺炎や髄膜炎の原因となります。
免疫不全のある方(脾臓を手術で摘出した場合など)では、重症感染症の原因となることがあります。

感染経路

感染した人の咳などから放出された、空気中の飛沫を吸い込むことで感染します。

対象者

免疫不全(脾臓摘出など)がある方が主な対象となります。
小児(2か月~5歳未満)では定期接種の対象となっています。

接種方法と回数

皮下注射、1回

接種期間

脾臓摘出後や脾機能低下症の方は、1回のみ接種を行います。
2か月~5歳未満の方は定期接種に準じて接種します。

予防接種の効果

90%以上の予防効果があると言われています。

接種の副作用

接種した部位の痛みや腫れ、倦怠感や頭痛が出ることがあります。 

接種できない方

以前の接種でアナフィラキシーなどの過敏反応があった方

投稿者プロフィール

明石 祐作 Yusaku Akashi, MD, PhD
あかし内科クリニック(大阪府柏原市)の副院長です。総合内科専門医、家庭医療専門医・指導医、救急科専門医、医学博士。診療所から大病院まで、色々な医療機関で研鑽してきました(現在も継続中)。「最初に何でも相談できる医者」を理想とし、日々診療しています。