ワクチンの厚労省規定が緩和され、柔軟な接種スケジュールが可能に

日本の予防接種には様々な規定があります。安全を守るために考えられたルールですが、その後の研究が進み、今ではあまり妥当でない規定も残っています。

予防接種の規定は、日本は海外より対応が遅れています。海外では昔から複数ワクチンの同時接種は広く行われていましたが、日本で一般的になってきたのはここ最近です。ワクチンの間隔も世界標準とは異なっていましたが、2020年10月から規定が変わることになりました。

ワクチンは不活化ワクチンと生ワクチンの2種類

接種間隔についてお話しする前に、ワクチンの種類についてご説明します。

不活化ワクチン:ウイルスや細菌を分解して、成分の一部を使って作ります。接種した場所が腫れることはありますが、死んだ菌やウイルスを使うので、予防接種で病気にかかることはありません。

生ワクチン:病原性を弱くした、生きたウイルスや菌を含んだワクチンです。予防接種をした後、体の中でウイルスや菌が体の中でゆっくりと増え、その過程で免疫ができます(軽くかかって免疫を作る)。かなり病原性を弱くしてあるので、予防接種をしても、ほとんど何も症状は出ません。まれに症状が出ることがありますが、実際に感染するより、はるかに症状は軽くすみます。
※薬や病気で免疫がかなり落ちている人は、接種はできません。

複数のワクチンを接種する場合、予定通り終わらせるのが難しいときがあった

厚生労働省は、複数のワクチンを接種する場合は以下のような規定を定めています。

  1. 同時に複数のワクチンを接種
  2. 同時に接種しない場合(別の日にワクチンを接種する)は、期間をあけて別のワクチンを接種
    -注射の生ワクチン:4週間経つまでは他のワクチンを接種できない
    -不活化ワクチン:1週間経つまでは他のワクチンを接種できない

しかし、海外では「不活化ワクチンや経口の生ワクチンを接種する場合、接種間隔を気にしなくてもよい」とする見解が一般的です。日本の規定だと、短い間に複数のワクチンを接種する場合、予定通りに済ませるのが難しいことがありました(定期接種の合間にインフルエンザワクチンを打つ場合、入学・入職や海外渡航に必要なワクチンを打つ場合、など)、

2020年10月からワクチンの接種間隔が柔軟に

今年の10月から予防接種の間隔について規定が変わり、海外と同様の規定となります。

生ワクチン(注射)→生ワクチン(注射)で4週間あける

の時以外は原則、接種間隔の制限がなくなります。不活化ワクチンや生ワクチン(経口)などは、柔軟なスケジュールで接種することができます。違う種類のワクチンを打つ場合、接種間隔は以下のようになります。同じワクチンを接種する場合は、決められた間隔をあける必要があります

注射の生ワクチン:麻疹・風疹・水ぼうそう・おたふく・BCG
経口の生ワクチン:ロタ・コレラ・経口ポリオ(日本では使いません)
不活化ワクチン:インフルエンザ・肺炎球菌・ヒブ・日本脳炎・4種混合・A型肝炎・B型肝炎・子宮頸がん・狂犬病・破傷風・注射ポリオ

スケジュールが柔軟になることで、例えば以下のような事例が考えられます。

事例1:帯状疱疹のワクチンを接種した翌日から、他のクリニックでもインフルエンザワクチンを接種できます。


事例2:インフルエンザワクチンだけは、定期接種とは別の日に接種するよう言われることがあります。今まではインフルエンザワクチンを接種したあと、他の予防接種をする前に1週間あける必要がありました。今年の10月からは、次の日に別の予防接種をすることができます。

事例3: 海外渡航のため、トラベルクリニックに通院中。接種の本数が多く、渡航まであと1か月ほど。麻疹(はしか)の予防接種を受けたことがないため、2回受けるよう言われた。今までの規定だと渡航前に1回しか受けられなかったが、スケジュールを柔軟に組めるようになったので、2回受けることができた。

今回の改定でワクチンのスケジュールが柔軟になり、たくさん予防接種があって予定が組みにくかった方には朗報です。接種するワクチンによってスケジュールは変わるため、詳しくはかかりつけの先生にご相談ください。